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PL保険とは?概要や注意すべき点などを解説
製造業を始めとするさまざまな業種の人が加入している保険に「PL保険」があります。
PL法の補償内容や注意ポイントなどを聞かれると正確に答えられる人はほとんどいないのではないでしょうか。
従いまして、PL保険の概要や注意すべき点などについて、この記事ではわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みください。
PL保険の概要
事業者のための保険とされるのが「PL保険」であり、工事業者や飲食業者など広範囲の事業者に欠かせない保険です。
でき上った物を引き渡した後、あるいは工事の完了後に消費者にケガを負わせたり、消費者の所有物を壊したりした場合の補償をします。
例えば、工事業者の場合は、施工後に発見された損害が、飲食業者や製造業者の場合は、製造や販売などの過程で生じた損害が補償の対象になります。
PL保険が必要な業種
以下の業種にPL保険が必要です。
業種 | 概要 |
1.建築業 | マンションや戸建ての住宅などを建築する業種 |
2.工事業 | 総合的な企画のもとに建築物などの工事をする業種 |
3.製造業 | 原材料や素材を加工して製品を生産する業種 |
4.飲食業 | レストラン、居酒屋などの飲食店で料理や飲み物を提供する業種 |
5.販売業 | 商品を顧客に売る業種 |
6.卸売業 | メーカーなどから商品を仕入れ、小売業者へ販売する業種 |
ネーミングから、PL保険は建築業者や工事業者、あるいは製造業者に限って必要な保険だと思われがちですが、その他の業種にも必要な保険です。
請負会社賠償責任保険との違い
ところで、PL保険と請負会社損害賠償責任保険とはよく似た言葉ですが、どこが違うのでしょうか。
請負業者賠償責任保険は、工事中の事故が補償の対象の対象となりますが、PL保険の場合は工事完了後に生じた事故が対象という点が違います。
PL保険の補償内容
以下の6つの損害にPL保険の補償が可能です。
補償 | 具体的な内容 |
1.損害賠償金 | 損害を受けた被害者への賠償金 |
2.損害防止・軽減費用 | 被害拡大を防防止するための費用 |
3.争訟費用 | 弁護士費用や訴訟費用 |
4.緊急措置費用 | 事故が発生した場合の緊急措置への費用 |
5.権利保全行使費用 | 他にも責任がある企業がある場合、その企業に対して求償権を行使したり保全したりするための費用 |
6.協力費用 | 事故解決のための保険会社からの要請に応えるために必要な費用 |
なお、以下の点に注意が必要です。
・PL保険加入期間のみ補償が可能
・PL保険に加入する前に事故の原因が発生していたとしてもカバーが可能
・PL保険加入時に損害の原因となるものがあったとしても、PL保険をやめてしまったら、補償は受けられない
・補償内容や金額は保険会社によっても、契約内容によっても違う
PL保険の補償対象となる具体例
業種ごとに補償が必要となる具体例をご説明します。
業種 | 補償が必要となる具体例 |
1.建設業・工事業 | 施工ミスのため引き渡した後の台所で水漏れが発覚した
・設置した看板が落下し、下にいた人がケガをした ・配線ミスにより漏電し、火災になった |
2.製造業 | ・電子レンジの発火が原因で火事になった
・自転車の部品に欠陥があって事故になった |
3.販売業 | ・外国から輸入した自動車を販売したが、欠陥があったため購入者が事故を起こした
・化粧水を販売したところ、顔に炎症ができた |
PL保険の補償対象にならない事例
PL保険に加入していても補償対象外となることがあります。
具体的には下記の場合です。
・故意や重過失があった場合
・極端に危険なもの取り扱った場合
・同居の親族に対するもの
・業務中に従業員が被った身体の障害を原因とするもの
・台風や地震などの自然災害によるもの
・措置を正当な理由がないのにリコールなどを行わなかったために起こった場合
特約も可能
特約を追加することでさらに広範囲な補償が可能です。
特約名 | 可能な補償 |
1.不良完成品損害補償特約 | 完成品の一部などとして使用されたため損傷したことによる損害を補償 |
2.不良製造品損害補償特約 | 製造品の部品などとして使用されたため、壊れてしまったことによる損害を補償 |
3.食中毒・特定感染症利益補償特約 | 営業ができなくなったことによる損失を補償 |
4.リコール費用特約 | 生産物の欠陥などがあるため、商品などを回収するためのなどの費用損失を補償 |
PL保険の注意点
PL保険にはいくつかの注意点があります。
順番にご説明しましょう。
1.補償対象外になる場合がある
以下の場合は、損害賠償責任がある場合でも保障対象外となります。
・故意や過失で製品を破壊した場合
・極端に危険なものを取り扱ったりした場合
・医薬品や農薬、食品などが予想された効能などがなかったことによる損害
2.自己負担が必要な場合がある
保険金支払いにならない一定額の免責金など、PL保険に加入していても自己負担が必要な場合があります。
具体例:
2,500万円の損害賠償額で、200万円の免責金額がある保険の場合、2,300万円が保険金として支払われますが、200万円は自己負担しなければなりません。
3.立証責任を負うのは被害者
ところでPL補償製造物責任を追及する場合は、立証責任を負うのは誰でしょうか。
もっぱら被害者である原告が立証責任を負うことになる点も注意が必要です。
PL保険以外のおすすめの保険
建設業や工事業の人のために、推奨できる保険がPL法以外にもいくつかあります。
3つの保険をご紹介しましょう。
1.第三者の人やモノの損害を補う保険 | 1-1.請負業者賠償責任保険 1-2.PL保険 |
2.モノの損害を補う保険 | 2-1.建設工事保険 2-2.組立保険 2-3.土木工事保険など |
3.人の損害を補う保険 | 3-1.労災上乗せ保険 3-2.使用者賠償責任保険 3-3.法定外補償保険 |
保険会社にも相談してその企業に適した補償がある保険に加入する必要があります。
まとめ
ここまでPL保険の概要や補償対象となる事例、ならない事例、注意すべき点などについて解説してきました。
第三者への補償をカバーしてくれるPL保険は、建設業製造業などにとっては不可欠な保険です。
しかし、PL保険には補償の対象外になるケースがあるなど注意点もいくつかあります。
保険会社によく相談しながら適切なプランに加入することが大切です。
コラム監修者 プロフィール
磯崎学(イソザキマナブ)
中央大学法学部にて政治学科を学ぶ。
大学卒業後、三井海上火災保険会社で保険営業の基礎を学ぶ。
その後、平成10年12月より独立し、現在、自社の代表を務める。
代理店として25年以上の実績があり、企業への保険提案を得意としている。
事故処理の経験も豊富。
■保有資格
損害保険大学課程コンサルティング資格、損害保険募集人一般資格(通称:損保一般)、生命保険専門資格