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PL法とはどんな法律?PL法の定義や概要、裁判事例などを簡単に解説
よくテレビのニュースなどで耳にする「PL法」とはいったいどのような法律なのでしょうか。
企業の責任が問われて、訴訟になっているケースがよくとりあげられているようですが、正式な定義を答えられる人は少ないのではないでしょうか。
そこで、この記事では、PL法の定義や概要、裁判事例などについて簡単に解説します。
ぜひご参考にしてください。
PL法とは
欠陥がある製造物によって消費者の健康などに損害が与えられて、製造物の欠陥が原因であることが証明できた場合、製造業者等の損害賠償を認める法律が「PL法」です。
「製造物責任法」とも呼ばれることもあります。
PL法は、あくまでも利用者を保護することが目的とされるものです。
PL法の概要
PL法の概要を整理します。
・施行:平成7年7月1日
・対象:製造又は加工された動産(サービス、不動産、コンピューター、プログラムなどは対象外)
・PL法義務者
以下の4つに区分されます。
業者名 | 内容 |
① 製造業者 | 製品そのものを製造する業者 |
② 輸入業者 | 製造物を輸入する業者 |
③ 表示製造業者 | 製造物に氏名などを表示した者(製造元、輸入者、輸入元) |
➃実質的製造業者 | 製造物に「実質的な製造業者」だと認識できるような氏名などを表示した者(販売元) |
PL法の裁判事例
具体例として3つの裁判事例をご説明します。
事例1.森永ヒ素ミルク事件
概要 | ・幼児用粉ミルクにヒ素が混入 ・粉ミルクを飲んだ幼児約1万人がヒ素中毒に見舞われ、多数の幼児が死亡 |
結論 | 「守る会」、「国」、「森永乳業」の三者会談が行われ、財団法人が設立され被害者を救済することとなった。 |
事例2.カネミ油症事件
概要 | ・カネミ倉庫が製造した食用油の中に、脱臭のために使用されていたポリ塩化ビフェニルが混入
・この食用油を摂取した消費者は皮膚の異常などを発症 |
1.民事事件としての判決(最高裁判所) | 被害者である原告の上告を棄却 |
2.刑事事件としての判決(福岡高裁) | 工場長に禁錮1年6カ月の実刑判決 |
事例3.こんにゃくゼリー事件
概要 | ・1歳男児(兵庫県在住)が、マンナンライフのこんにゃくゼリーを食べ喉に詰まらせて死亡した ・製造元に約6,200万円の損害賠償を請求 |
判決(大阪高等裁判所) | 原告側の訴えを退ける |
PL法で使用されるラベル
注意喚起や警告表示のためにPL法で使用されるラベルには、絵表示、シグナル用語、注意喚起シンボル、警告文を組み合わせて行いますが、絵表示のみで表記される場合もあります。
PL法上の欠陥
PL法上の欠陥には以下の3つのものがあります。
A.製造上の欠陥 | 何らかの理由により製造過程で発生したもの |
B.設計上の欠陥 | 製造物の設計自体に問題があったため、完成した製造物に欠陥が生じたもの |
C.指示・警告上の欠陥 | 欠陥のおそれがある製造物に、適切な指示や警告をしなかったために生じたもの |
責任回避のためのガイドライン
PL法による責任を回避するためのガイドラインが定められています。
説明文や警告文として下記の項目を記載しなければなりません。
・製造業者が製造物を引き渡した年月日
・通常予想される製造物の使用形態
・製造物の持つ特性
2つの抗弁
PL法には、企業が免責されるための条件として以下の2つの抗弁があります。
それぞれを具体的に説明しましょう。
抗弁名 | 内容 |
1.開発危険の抗弁 | 製造物をその製造業者等が引き渡した時に、欠陥があることが予知できなかったことを製造業者が証明した場合 |
2.部品・原材料製造業者の抗弁 | ある製造物が、他の製造物の一部として用いられ、他の製造物の製造業者の設計に従ったことによって欠陥が生じた場合で、業者が無過失を証明した場合 |
損害場使用求償権の時効
PL法に基づく損害賠償請求権には時効があり、時効は以下の2つのケースの場合に認められます。
時効のケース | 注意点 |
1.被害者、あるいはその法定代理人が賠償義務者や損害を知ってから3年過ぎた場合 | 事実を知ってから起算 |
2.製造物を引き渡してから10年過ぎた場合 | 事実があった時点から起算 |
企業のための保険
PL法により、損害賠償を請求された時のための保険があります。
企業が保険に加入しておくといざと言う時の助けになるでしょう。
補償される費用は以下のとおりです。
・訴訟費用
・損害賠償金
・争訟費用(弁護士費用含む)
・事故発生時の応急手当等の緊急措置費用
・求償権の保全や行使等の損害防止軽減費用
まとめ
消費者の生命、身体、財産に損害を与えるような欠陥製品が出回った場合、企業側は迅速な対応が必要です。
対応が遅れると、紛争が頻発し、企業に大きなダメージを与えることとなります。
実際に欠陥製品をめぐる紛争が発生した場合は、まず、欠陥製品や被害者の情報を正確かつ迅速に把握し、所轄官庁へ報告しなければなりません。
また、欠陥製品による被害が認められた場合は、早急に被害者への謝罪や賠償を行わなければなりません。
対応が遅くなればなるほど訴訟になるリスクも高くなり、高額の賠償責任を負わされる可能性が高くなるので注意が必要です。
コラム監修者 プロフィール
磯崎学(イソザキマナブ)
中央大学法学部にて政治学科を学ぶ。
大学卒業後、三井海上火災保険会社で保険営業の基礎を学ぶ。
その後、平成10年12月より独立し、現在、自社の代表を務める。
代理店として25年以上の実績があり、企業への保険提案を得意としている。
事故処理の経験も豊富。
■保有資格
損害保険大学課程コンサルティング資格、損害保険募集人一般資格(通称:損保一般)、生命保険専門資格